2020年9月30日水曜日

簡単ですか?

温かな珈琲が美味しい季節になりました。
今は珈琲というより秋の果物に夢中な夜宮でございます。




焙煎て簡単ですか? と聞かれることがあります。
そして焙煎で簡単に出来るんですね、と言われることもあります。

さて。

答えとしては子供にでも簡単に出来ます。はい。
ようは煎り豆ですから。
火を通しさえすれば珈琲になります。なんの難しいこともありません。
機械にしろ手焼きにしろ、器具の使い方と火加減と
焙煎のプロセスさえ覚えれば至極簡単なものです。マニュアル化も出来ます。

焙煎の温度を決め、タイマーをかけて何分になったら
こうする、はじけが始まって何分になったら取り出す。
それでもちゃんと珈琲になります。
使う生豆が良ければ美味しくなります。




















難しいのはそこに個性を表現すること。
それは何でも同じです。
ケーキでも珈琲でも絵画でもアクセサリーでも。

自分が思う一点。味。そこを目指して何度も焙煎を繰り返します。
農産物ゆえに変わる品質。梅雨時期の焙煎、乾燥する時期の焙煎。
また珈琲の原産地は政情が不安定な国も多いです。
入荷が止まるときもあれば、天災によって農園が全滅し、入手できなくなる豆もあります。
そうなると代用できる生豆を探さなければなりません。
豆の種類によって引き出したい味もかわります。
量販店で販売したいのか小さな店舗で限られた地域で販売したいのか。
スタンダードな珈琲をメインにするのかプレミアム性をメインにするのか。

特に当店はいつ飲んでも変わらない味。というのを大事にしています。
10年前も今日の味も変わらない。
その為に毎回同じ焙煎具合というのはありえません。
違うと思ったものは出さずに廃棄することも厭いません。
もちろん、当店のイメージする珈琲が必ずしも美味しいわけではありません。
そして焙煎する人にもさまざまな考えがあります。
100%の正誤はありません。

今回のドリップバッグ。豆のブレンドも焙煎もガラッと変えました。
またドリップバッグという形でどれだけ最初にイメージした味が表現でき、
それを長時間保持できるかというのは新たな試みでした。
当店の焙煎スタイルの一つの集大成でした。
袋詰めの委託製造もふくめて1500P以上作成したドリップバッグが
お客様へお配りしたものとあわせて二か月で無くなったのは
認められたとか成功ではなく、さらに次のステップへ進めという事だと思ってます。
恐怖でしかありません(笑

焙煎は簡単ですか?
しごく簡単です。だれでも出来ます。
それを難しくするのは己。理由はひとつ。まだ豆の声を聞けてないからです。
いつでも学びの途中。













2020年9月14日月曜日

記憶の彩り

 ばたばたと過ぎたこの一ヶ月。
強気で作った30周年の粗品もすべて配り終えてほっとしてる夜宮です。



ドリップバッグは結構な数作りまして、おまけに賞味期限も通常の半分に設定したため、

残ったらどうしようかと、内心考えてましたが💦

なんとか目標にしてた今月いっぱいで終了しそうです。

ありがとうございました。


先日、隣の市から懐かしいお客様がご来店されました。

ドライフルーツのお土産と、最近亡くなった彼の思い出と共に。

悲嘆ぶりが表情にあらわれていましたが、

それでもぽつぽつと思い出を語るうちに少し笑顔が見えて。

お帰りになるときは笑顔で又来ますと手を振っていかれました。

長年営業していると、

こういった場面に多く出会います。


モカが好きだったのよね、ウインナーよく飲んでたわ

この席が好きだったのよ

遺された方の中に残る故人の思い出。

そこに当店が関わっていることに、いつもありがたさと責任を感じてしまいます。

常に思ってることですが、

どういった時間を提供できるか。

それこそが飲食店には必要なことだと思います。

こだわった食材もこだわった珈琲もすべて

お客様の記憶を彩るものにしか過ぎないのですから。






コーヒーの酸味